バイクで世界一周。そんな話題の映画を、同じバイク世界一周した者として、地元の映画館で見に行きました
そして、人生初の映画館デビューなのでそのことも書きます
まず、タンデムロードの主人公「ナメさん」と「アユミ」ちゃんは、
実は知り合いです。
これまで何度かお会いしてきたし、それぞれ二人にいろいろ話をしたこともある。
私も2000~2001年に125㏄の小型バイクで世界一周し、走行距離もなめ夫婦と同じ6万キロで、36か国、470日間の西回りの旅だったので、旅の規模や軌跡がいろいろ似てるんです。
そのためか、なめさんは旅をするにあたり、私の世界一周を書いたウェブサイトを参考にしてくださったらしいので、冥利に尽きます。
そして今回驚いたのが、イオンシネマでも上映できたということ
ふたりとも俳優ではない無名の一般人でも、独立系ミニシアターではなく、商業映画と同じ土俵に立てたというのがすごい。
全国全てのイオンシネマで上映できるわけじゃないけど、運よく地元のイオンシネマでも上映決定したので
「これは必ず見にいけ!」と天の啓示にも思えた。
タンデムロード
ついに本日より
超絶賛上映中! pic.twitter.com/Ik4UO3qWiu— たびいちドットコム@日本一周連載中 (@tabi1com) June 20, 2025
何がすごいかって、
ふだん買い物だけでなく仕事でもお世話になってる地元のイオンに
私の知り合いがデカデカとポスターを飾ってることですよ
もうね、これは本当に驚きです!
9年前のドキュメンタリー映画「NoraRider」の令和進化版
映画の内容については、9年前に見た前身の映画「NoraRider」の試写会
に書いてきたので、今回はその追記になりますが
(ネタバレがあるので注意)

前回には無かった出発前の日本での様子や、あゆみちゃんのナレーションとアニメーションが追加され、いい具合に味付けされている
遅咲き狂い咲き?の映画館デビュー
実を言うと、47年生きてきて、映画館に入るのははじめてなのだ
もちろん映画が嫌いではなく、映画じたいは金ローなどのテレビや、レンタルVHSビデオやDVDとかを借りて、いろいろ見て来た
飛行機の中でおっぱいバレーや幸せのハンカチ見たりとか、高速バスの中でジャッキーチェン映画みたりとか、公民館などの上映会などにも行ったりした。
しかし、
お金を払ってチケット買って映画館に足を運ぶという行為は、生まれて初めてなのだ
我が「映画館バージン」を破ってくれたのだ
下調べ
人生はじめての映画館なので、下見してきた
自動販売機で、上映スケジュールを見ることができる
6月20日の初日は朝早い。熟睡している時間である
土日は夕方からだが、通常料金の1800円なので高い
月曜ならハッピーマンデーなので1100円と安いし、いきなり初日ではなく、心の準備をしてから見たほうがいい
とは言え自分は「熱しやすく冷めやすい男」なので
先週末まで、寝ても冷めてもタンデム・ロードのことで頭がいっぱいだったけど
今週になって月曜を過ぎてからは、なぜか熱病のような思いも一気に冷めた
だけど公開が終わるまでに映画を見んとなあ・・・
ということで結局、その次の土日はレイトショーで1300円なので、29日の日曜に決定。月曜以降はもう上映はなさそうなのでラストチャンスだった
私はタイパ重視なめんどくさがり人間なので
テレビの映画を見るときは録画して必要なところだけとか早送りしるタイプだが
映画館でフルで2時間集中してタンデムロードを見るというのは、
晴れ舞台の大試合にも感じられて、とても緊張するのだ
そして当日 6月29日
席を指定してチケットを買うと、なんだかチェックインして飛行機に乗るような感覚だった
まあ、世界一周の旅だから、旅の緊張感の追体験だわね
ついに見ました!
タンデムロード pic.twitter.com/DJJe1GmHrC— たびいちドットコム@日本一周連載中 (@tabi1com) June 29, 2025
場内は私の後ろに1人と夫婦らしきふたりの4人。みな中高年。
上映前は、いつまで続くんだと思うぐらいほかの映画の広告がうんざり延々と続いたが
やっと始まり「さあ映画を楽しむぞ!」と意気込んだ
ところが、とんでもないことになるのだった・・・
それは、
映像酔い・動画酔い。
最初は気にならなかったが、ロシア編に入ってしばらくしてから、無意識のうちに気持ち悪くてしょうがなかった
しかも並の吐き気ではなく、最後の方になると吐き気だけではなく両腕が痺れて震えるほどの異常さで、あまりの辛さに離席したものの、客席に戻れず、館内の隅で見ながらうずくまるほどで、地獄のような苦しみだった
動画酔いのメカニズム
https://brand.taisho.co.jp/semper/trivia/004/
https://www.aist.go.jp/aist_j/magazine/20221214.html
あゆみちゃんが過呼吸になり、泣きながらのたうち回るシーンがあったが
自分も共に泪を流しながら強烈な吐き気に耐えていた
誰もいなかったら彼女と同じように叫んでのたうちまわってた。それだけ苦しかった
じつは9年前のNoraRider試写会にも同じ症状になり、「追体験ができた!」と書いたのだが
今回は9年前の時よりも、吐き気がひどかった
上映が終わった後も2時間ぐらい吐き気が止まらず、その後も寝付くまでずっと気持ち悪かった(翌日には解消したが、まだ気分の悪さは少し残ってた)
その理由は、せっかくだから前の方の席を予約したので、視界がすべて入る。そして前回の会場より音響も迫力あったので、それがVisualShockになり、逆に危険だった
そして休憩時間もなく、手元に飲み物もなかったのでよけいに悪化した。
ただ、後ろの観客はみな酔ってる様子はなく、自分ひとりだけが苦しんでた
旅先でのエピソードや人々の出会いなど、しっかり丹念に撮っているので
コンセプトとしてはとても良かった。
その反面、すごい手振れシーンが混じっていて、
「世界一周の追体験するぞ!」と思ったのに
実際は地獄のような画面酔いに苦しめられそれどころではなく、世界一周の世界を満足に見れなかったのがすごく残念だった。
映画館だと、うめくこともできず、一時停止も巻き戻しもできないのでトイレに行って吐こうとするとその間に見たいシーンが終わってしまうので、ずっと耐えた。
人生初の映画館デビューは、とんでもない結果になった。
とはいえそれじゃ身もふたもないので、映画について、そしてどう感じたのかを書きます
二人について
タンデムのパッセンジャーのアユミちゃんは
福島のきゅうり農家の娘で、地味で、陰キャ。これは俳優とは正反対なキャラクターだ
ライダーのナメさんも
昨年9月に冒険家の杉野真紀子さんの講演会場で久々に会った時は、
開演前に壮年高年の人たちが盛り上がってる中
ひとりぼっちで小さくぽつんと座ってて、その人がなめさんだとは知らなかったぐらい
まるでオーラのない人だった
https://tabi1.com/norarider-tandem-road
ふつう「BMWの大型アドベンチャーバイクで世界一周してきたぜ!」
というと、そもそもドイツ人のように体格がでかかったり、強面だったり、英語も話せたり、ドデーンとかまえてたりで風格もオーラもギンギンで堂々たるイメージだけど、舐めさんはどれをとっても正反対。
あゆみちゃんも人前で話すのも苦手な感じだったので、「表舞台」とはまるで縁のないタイプだと思う
そんな彼女が世界の出会いでどう成長していくのかが、この映画の肝である。
共感と、負の感情
「この閉鎖的な狭い世界が嫌い」
生まれ育った会津の環境や、理想とは離れた社畜生活だと、とりわけそう感じるかもしれない
たびいちも若い頃は日本が嫌いだった。憎んでいた
それは社会に出るころには就職氷河期で、大変嫌な思いをしてきたので共感なのだ
バブルが終わり経済も沈みきってピリピリした社会。なぜ日本人は楽しく生きようとしないのか?こんな国嫌だ!
閉鎖的で狭いこの国を抜け出したい!いろんな世界を見たい!どうせなら世界一周してビッグになりたい!新天地を見つけたい!と。
でもその負のエネルギーこそが、世界に出る原動力になる。
ケンカも耐えないが、なめさんから独り立ちして旅をすることで自分を変えて、毎日旅も楽しめて強く成長していく物語だ。
旅と愛とは?
旅の前半、なめさんは「ボクがアユミを守ってあげないといけない」という思いだったが
しかし彼女にとってはそのストロングな想いが、逆に彼女を追い詰めて、苦痛でしかなかった
もし愛の力が足りなかったら
「ああ日本に帰っていいよ、別々で旅しよう、そのほうがお互い楽だろ」とかいうだろう
でもそうなると、この映画は生まれてこなかった
なめさん自体「後ろに座るよりも運転してるほうが楽だ」とのたまっており
「女の子にずっと不自由な思いをさせるなんて、なめはなんてひどい男だ!」と多くの人が思うのではないか(笑)
後ろに乗る側は、想像以上に不自由で大変だ。
その苦痛が、来る日も来る日も延々と続く
そのため「カップルが二人乗りして世界一周」の出発前のきらきらした夢と、現実のギャップはすごくて、タンデム世界一周も、実は9割挫折(破局?)するという。
そんな無鉄砲な旅の果てにどうなるかが見どころである。
さいごに、自分はどう変わる?
私の若き日の世界一周も、引き裂かれるほどの辛いことや不安もあったけど、たくさんの出会いや思い出ができた
彼らにとっても、自分にとってもバイクで世界一周は人生最大の宝物である
そして、次はBMW風のアドベンチャーバイクVストローム250でユーラシア・アフリカに行く。
まだ見ぬロシアやモンゴルがこちらを呼んでいるような臨場感にさせる、映像の力。
映画によって、自分の過去の旅と、次の世界の旅の夢を見させてくれる。そんな気分にさせてくれた。
そして、無名の二人が主役のありのままのドキュメンタリーで脚色や演出も無いからこそ、
バイクに興味が無くても、旅に興味がある人、自分を変えたいという人、
映像酔いに強い人に。