富士山よりもさらに1000m高いキボハットで迎える夜。
その先に待ち受けるのは、キリマンジャロ山、最大の難所。
そこにあるのは生物もいない、死の世界。
そして何が待ち受けているのか・・・・!
マラングルート 出発~山頂~ゴールまでの全行程 70km 標高差4025m
寒々しい色をした夕方のキボハット(4750m)
17時10分、これが今日の夕食。
といっても昼食とおやつを食べたばっかりなので、中々全部食べられず。
しかもスパゲティは、標高が高く、充分に茹でられないのか、不味かった。
だけどもりもり食べて、明日に備えなくてはならない!
夕ぐれになると、キボハットは影の濃い、寒々しい色になる
思えば、あの寒々しさは、アンデス山脈にいたときにそっくりだった
2001年1月1日、21世紀、いや二千年紀の最初の日を、
世界最高所のスキー場(5400m)で迎えたのだが、
夕ぐれの時も、こんな影の濃いさびしげな色をしていた
そして、空気のうすさも同じなので、やはりどことなく息苦しいところも同じで、
南米アンデスが鮮明に思い浮かぶ。。
明日は深夜発なので、日没と同時に、6時には寝袋にもぐりこんで寝る。
いよいよ頂上へ・死と隣り合わせの極寒暗黒地獄
23時半ごろ起きる。
ついに、この日がやってきた。
「頂上をめざす」
これより先は、ポーターはキボハットに滞在し、頂上を目指すのはガイドと私のみとなる
背負う荷物は最小限にして、あとの荷物はキボハットに置いておき、
がっちり防寒装備を着て、0時出発!
真っ暗な中、日本から持ってきてアフリカツーリングで活躍している自前のLEDヘッドライトを頼りに進む。
これまでハイキング気分で歩いていたのとは全く違い、恐怖の世界になる。
5000mを超えると、いよいよ最大の難所、急な坂のぼりが待っている
3000mぐらいの草原地帯は、絶景と雲海と高山植物で天国のような世界だったが、
5000mを越え、急な山を登る真夜中の行軍は、
まるで極寒と暗黒の地獄の中を歩いている気分だ。
そして、
苦しい。
苦しい。
とにかく苦しい。
とにかく苦しい!
平地の半分しか酸素がないので、
もう息が「ハーハーゼーゼー」と苦しくてしょうがない。
3歩登るたびに息を整えなくてはならないのでちっとも進めない。
植村直己氏などの登山家の苦労がここで10%ほどわかった。
粉雪が舞っている。
ここはもはや「アフリカ」ではない。
我々以外、人間も動物も植物も、すべてが誰もいない世界。
闇と、死の世界。
ここは地獄かもしれない。
そして、宇宙かもしれない。
ひたすら無言で、少しずつ、登っていく
ポレポレ(ゆっくり)
ポレポレ
空気が希薄なので、高山病と死の危険がある。
真っ暗な山登りなので、意識が途切れると、
山からまっさかさまに転げ落ちるかもしれない
闇と極寒。死神がすぐそこにいる。そんな気分である
ひたすら登る。
呼吸ペースが乱れないよう、
ゆっくり。
ゆっくり。
しかし、
確実に登る。
4時7分。雪を発見。粉雪の塊りだ。
この日見た雪は、
我が人生、最初で最後のアフリカの生の雪だ。
そして・・
ギルマンズポイント Gilmans Point (5690m)到着
キリマンジャロの頂上の一つ、ギルマンズポイントに到着!!
気温、-3℃。
なにせキリマンジャロの登山者が、ここまでたどり着ける確率は、50%ほどだという
とにかくここまで来ることができた
とはいえ、まだ終わってはいない。
ギルマンズポイントからウフルピークまでは、
山の頂上のお鉢の上を歩くので、とてもゆるやか。
あとはもう少し!
そして
ついに
ついに、
ついに!
5時34分、ウフルピーク到着!
Uhuru Peak!
ついに成功!5890m!アフリカ大陸最高峰!
とにかくここまできたんだ!
思えば、人生の中で到達した、最高地点
気温-6℃の寒さの中、疲労と極寒のため、座り込みながらも、
これまで旅をした世界中のことが、思いうかんでいく。
しっかりアフロづらを持ってきたところが情けないけど(笑)
世界の果てに行き、そして、宇宙に近づいた男。
たびいちであり、アフロあきらであり
人間、やればできる。
そして
はるか遠い国・日出る国から来た男の登頂を祝うかのように、
朝日が昇り始めていく。
天空の世界から眺める氷河と雲海は、
感動のエンディングにふさわしい、
これまでに見たことのない、神々しい美しさだった。
そして、エンディングへ
つづく