「チョット、ドコイク?」「アナタ、ニホンジン?ミルダケ・ヤスイ」
そんな古典的で怪しい日本語を発射する者がいれば、時にはびっくりするぐらいの表現を知っているインドの日本語使い。
面白くも、危険な香りに満ちたインドのストリートの日本語使いは、なぜそこまで日本語がうまいのか?
20年前からインドを旅してきた、たびいちが分析しました。
「金」 日本語のほうが儲かる
その理由は、ただ二つ。
「金」と「女」。
もちろん、インドで日本語ができる人は、みんながみんな怪しかったり下心あるわけではなく、「日本人にお世話になってるので、少しでもインドの旅に役に立てれば」と考える人も多い。
しかし大都会や観光地の街角でとぐろを巻いてるようなインド人は、結果的には背後にビジネスがあって、日本人相手に売れば(あるいはダマせば)インド人相手に売るよりもはるかに収益になるので、タミル語を覚えるよりも日本語を覚えたほうが実入りがいい。
バラナシのある土産店に行くと、日本語のできる若い店員が
「無理に何も買わなくていいし、お金はいらないから寄ってって」と言う。
実際その店には多くの若い日本人旅行者やインド人が遊びに来ているが、相手にとっては、バックパッカー達と話せば、それだけでタダの日本語勉強ができる。
しかしさまざまな人間が出入りする以上、紛れ込んだ悪いやつは、さらにカモになりそうな旅行者を偵察して狙っていたりする。
「女」 男である以上は・・・
白人女性は、大きい体格もさることながら、態度そのものがこええことが多い。
その点、やまとなでしこは概ねおしとやかなので、
インド男性にとっては日本女子は格好の大好物となる。
なにせ世界で一番モテるのは、まちがいなく日本人女性なのだ。
性については極めて封建的なインドでは、婚前交渉がダメなことが多く、
「娘は結婚する前は親のもの。結婚後は旦那のもの」なので、
インドの若い女性に下手に手を出すとボコボコにされるのがおちだが、カースト外である外国人の場合はそんな利害がないので、むらむらしているインド男子にとっては余計に付け込んでくる。
だから観光地のインドの若い男たちは、何は無くても日本語を覚えるのである。
インドの女子はこうして日本語を覚える
なお、つい最近だと、都会を中心に日本語を話すインド女子が増えている。
それは、日本のアニメや漫画で覚えたという人がほとんどだ。
日本のアニメやコスプレを好む女子というのは、もはや世界中どこの国でも共通だけど、インドでも遅ればせながら日本のサブカルの波が到達して、利害ではなく純粋な興味で日本語や文化を学んでくれている。
日本語使いと19歳の女子大生
しかし、怪しい日本語使いの多いバラナシらしい、象徴的な出来事があった。
それは日本人宿サンタナで同宿だった女子大生のAちゃん(仮名・19)は、これからATMに行きたいのだが、メインストリートに行くのが怖いのだという。
なんとも初めてのインド一人旅だそうで、そんな右も左もわからない日本の女の子が、混沌なバラナシをひとりで歩くのは、ジャングルの中にほうりこまれたも同然。
「それならATMまで一緒に行きませんか?」
ということでAちゃんと、同じ宿で出会ったBちゃんと、そしてATMへ行くための見張り役として、インド旅のレベルと経験値のある私がお供することになり、3人でメインストリートに向かった。
メインストリートに着き、AちゃんがATMを探しに出かけ、Bちゃんと自分がふたりでしばらく待っていると、いつものように日本語使いの男がやってきた。
その場所は、この動画の0:42~0:48のあたり。
「ドーモオニチャン」と聞こえてくるが、件の日本語使い本人かどうかは不明。
この男とは面識はあるのだが、しかし、今回は男の様子がおかしい。
どこか不快感があるような感じだった。
私が
「いまはそれどころじゃないんだ。悪いけどあっち行ってくれないか?」
と男にいうと、さらに態度を変え
「なんでそういう態度をとるんですか?それは人に対して失礼じゃないですか?ひどい態度を取った、どうしてくれる?」
となどと怒り出し、我々に対して、執拗に攻め始めてきた。
「なんでおまえにそんなこといわれなきゃならんのだ!」
と怒りたかったが、このときはBちゃんがいたし、下手にこじれると、もう見るからに偏執的な男なので、後で報復されかねない。
なので、
ここは「大人の対応」として「ごめん、ごめん」と平謝りしておいた。
男とは関係ないが、撮影してるとガンジス川ボートのガイドが勝手に乱入。
動画にはそのマヌケな応対の会話も入ってます。
その後、
Aちゃんが戻ってきて「あのATMはダメでした」というと、
男は
「別のところにもATMがあるから」
「なんならATMにつれてってやる」
となどと矢継ぎ早に言い始め、彼女たち二人を強引に連れて行こうとした。
不穏なものを感じたので、とっさに二人を呼び止めて、
「あいつは危険だ。人の多いもっと明るい所に移動しよう」
と、我々はその場から逃げ出して、難を逃れ、宿に戻ったのだった。
おそるべき男の嫉妬!インドストーカーの恐怖
ここで思ったのは、男の態度だった。
この男、自分がメインストリートに出るたびに何度か会ってきたが、普段あしらってもここまで執拗な態度は取らなかった。
しかし今回は自分ひとりでなく、若い女の子二人とともに歩いた。
彼女たちは気づいてなかったかもしれないが、
この男は私に対し
「なんでおめえみたいなのが、かわいい子連れてんだよ」
といった嫉妬心ありありなのは、男の直感として、一発で分かった。
ややもすれば、41歳の自分とは娘のような年齢差だ。
そしてAちゃんが先日しつこく付きまとわれて怖がっていた相手は、
ちょうどその男だったのだ。
AちゃんがいくらNoと断っても、男に粘着的につきまとわれ、結果何時間も無駄になって、メインストリートに行くのが怖くなったのだという。
この男、Aちゃんのことが大好きになり、とにかく合体がしたかったのだろう。
女子の一人歩きは
性に禁欲的で、いまだ封建的なインドでは、女の一人旅はタブーに近い。
自分はインドに長くいたのでいくらか実感して知ってるけど、一部の日本の女子バックパッカーは、そんなインドの特殊事情を知らずに、ほかの海外の国と同じような感覚で来るケースがたまにあるので、色白の若い日本人の女の子が一人で歩いてると、途端に飢えたオーカミがやってくる。
まとめのつぶやき
3月のバラナシの日本人宿は学生が多い。Tabippoの学生メンバーという女子大生もいた。
とある学生は、一流大学在学してるのに、近所の怪しい日本語使いにコロリと何百ルピーか騙されて、
「くそー!バラナシをブルドーザーでつぶしたい!」と憤慨。
それを横で笑ってしまう海千山千な自分は、我ながらいやなぢぢーである。
聖なる都バラナシはインドのみならず世界中から旅人を惹きつける、
エキサイティングで面白い街だ。
しかし、
聖なる都なんて大ウソだと個人的には思ってる。
欲が丸出しむきだしの汚い邪悪たる都市の一面もある。
用心、用心。
(10月26日 07:00)